百二十年の表家に息づく、はんなりの記憶
京都・室町、明治の町家を継承した都市型ラグジュアリーホテル

百二十年の表家に息づく、はんなりの記憶

祇園祭の山鉾が今も巡る室町通、明治三十二年(1899年)に建てられた表家と高塀は、解体されることなくそのまま今に残された。THE HIRAMATSU 京都は、この百二十年を超える町家の記憶を保存・再生し、2020年に都市型ラグジュアリーホテルとして生まれ変わった場所である。全29室、内外の意匠を手がけたのは、数寄屋建築の名門・中村外二工務店。「既存を主、新設を従」とする数寄屋の思想のもと、新たに積み上げた高層部は、あくまで表家の背景として控えめに設えられている。

敷地の奥には、松をあしらった「風の庭」と、竹を配した「光の庭」。建物と庭を分けて考えない「庭屋一如」の思想が、玄関を抜けた瞬間から漂う空気そのものを変える。明治の生活の痕跡を色濃く残す「走り庭」――かつての炊事場おくどさんは、照明家・豊久将三の光の設計によって、新たな表情を得た。木材、土壁、和紙。仕上げの一つひとつに、京都の職人の手技が積層している。

客室は52〜104平米、ゆとりある広さの中に町家の静けさが息づく。館内には割烹とレストランを併設し、京の四季を器に映す。ホテルという機能を、町家がもともと持っていた美意識を損なわずに織り込んでいく――それは保存でも改築でもない、第三の道である。

LUMIÈREの視点

私たちがTHE HIRAMATSU 京都を選んだのは、それが「町家風」を演出した宿ではなく、本物の百二十年の建築そのものだからだ。多くのラグジュアリーホテルが新築で「和」を模す中、ここにあるのは、実際にその時代を生き抜いた木と土と瓦である。

「既存を主、新設を従」とする中村外二工務店の哲学は、私たちがLUMIÈREとして貫きたい姿勢そのものと重なる。新しいものは、古いものの背景であるべきだという謙虚さ。それこそが、量産される国際チェーンのラグジュアリーには決して真似のできない、この宿だけの説得力である。

百二十年の表家に息づく、はんなりの記憶 1
百二十年の表家に息づく、はんなりの記憶 2
所在地
京都市中京区室町通三条上る役行者町361
エリア
京都・室町(烏丸御池)
建築
中村外二工務店 / Nakamura Sotoji Komuten
オーナー
株式会社ひらまつ
開業
明治32年(1899年)築町家を2020年3月開業
定員
全29室(52.0〜104.4㎡)
料金
¥54,200〜(1室)
アクセス
地下鉄烏丸御池駅より徒歩3分、京都駅よりタクシーで約15分

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