「霧の街」と呼ばれる京都・亀岡。360度を山並みに囲まれた盆地の、静かな住宅街の一角に、築100年の古民家をリノベーションした「6ishiki(ムイシキ)」がある。オーナーはアーティストの田中英行。この家は、彼の曽祖父が遺し、自身が育った生家でもある。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚という五感に、「自分の意識」を足した六つの感覚――それを研ぎ澄ますことが、この宿の名の由来であり、唯一の目的だ。
一日一組限定。1階には土壁と梁を残した和室、2階には昔ながらの趣を残すベッドルーム。中庭を望むこの家の中心にあるのは、総檜造りのプライベートサウナだ。90度まで設定できるフィンランド式のドライサウナで、アロマ水を自らかけるセルフロウリュウを愉しみ、水風呂には地下から汲み上げたミネラル豊富な井戸水を使う。誰もいない空の下、水風呂の余韻に身をゆだねながら、深く呼吸をする――それだけの時間が、ここでは贅沢そのものになる。
各室に飾られているのは、田中自身の作品だ。六根清浄や六道といった仏教的な思想、自然崇拝からインスパイアされた抽象画や写真――解体時に採集した土壁の土や水晶の粉末を素材に描かれた六角形のキャンバスは、この家の瞑想的な空気をさらに深くする。冬至の日の出の方向を向く庭のオブジェ、手ずから研ぎ出された紙の壁。何もかもが、オーナー自身の哲学の延長線上にある。
私たちが6ishikiを選んだのは、これが「宿泊施設」ではなく、一人のアーティストの生家そのものだからだ。曽祖父が遺した家を壊さず、自らの手で意識と向き合う場に変えていく――その行為自体が、他のどのブティックホテルにも複製できない説得力を持っている。
サウナも、水風呂も、掛けられた作品も、すべてが「六つの感覚を研ぎ澄ます」という一つの哲学のために存在する。豪華さを積み上げるのではなく、削ぎ落とすことで辿り着く静寂――それこそが、LUMIÈREが亀岡の古民家に見出した、もう一つのラグジュアリーの形である。
- 所在地
- 京都府亀岡市大井町並河2-737
- エリア
- 京都・亀岡(通称「霧の街」)
- 建築
- 田中英行(オーナー自身によるデザイン・改修) / Eikoh Tanaka (self-designed and renovated by the owner)
- オーナー
- 田中英行
- 開業
- 2022年(本館 tsuchikabe)/2023年夏(別館 hanare)
- 定員
- 一日一組・定員2〜4名
- 料金
- ¥39,600〜(2名・素泊まり)
- アクセス
- JR並河駅より徒歩約10分、京都縦貫道亀岡ICより車で約6分